かねてよりPreviewプログラムとして様々なユーザフィードバックを受け付けていた AppSheet Automation が、4/13 に正式リリースとなりました。 Automation: No-Code, AppSheet and Google Cloud | Google Cloud Blog
既存の自動化機能が大幅に増強され、加えてGoogleならではの様々なファンクションが含まれた魅力的な新機能リリースとなりました。既存のワークフローだけでも様々なタスク、アクションを自由自在にコントロールすることが可能ですが、Automationの登場によりさらなる機能が追加されるに至りました。
これまではワークフローから別のワークフローをコントロールすることができないなどの制限がありましたが、これが実現可能となることに加え、Google Drive内のファイル・フォルダデータとの連携、外部アプリとのよりシームレスな連携など数々の新機能が追加されています。
一方で Automation というキーワードから、国内外の各所でいわゆる RPA や iPaaS 製品群との比較が考察される状況が生まれつつあります。
将来的な可能性としてそれらの製品群が持つ自動化機能への発展を否定するものではありませんが、弊社では現在のところ既存のWorkflow/Report機能が刷新されたと理解するほうが今回のリリースの本質を見失わないのではないかと考えています。
以下、弊社独自の視点から今回GA ReleaseとなったAutomationを考察してみます。
AppSheet Automation 正式リリースの概要
今回の正式リリースにおいて注目すべき点は以下3つです。
既存Workflow/Reportの大幅な機能追加
Google Driveがデータソースに追加(フォルダ、ファイル名などのデータ構造を読み込み、テーブルとしてアプリで利用)
Gmail連携などの今後の開発計画発表
既存Workflow/Reportの大幅な機能追加
AppSheet には従来より強力な自動化機能として、データ更新をトリガとして動作するWorkflowと、スケジュールベースで動作するReportが備わっていました。
AppSheet Automation はこれらの機能が持っている要素を細分化した上で、さらに自動化を推進するための新たなコンポーネントが追加されたものとなります。 細分化された内容および、新たなコンポーネントの概要としては以下のような要素にて構成されます。
BOT: Automation の母体となる設定。後述 EVENTとProcessを組合わせて定義されるもの
EVENT: 既存WorkflowのCondition Rule および、Reportのスケジュール条件を切り出した設定。BOTが起動するための条件。外部アプリで発生したイベントも検知可能に。(注)
PROCESS: STEPという手順にそって、後述TASKや新たに追加された分岐処理、WAIT処理、RETURN VALUE処理などを組み合わせた設定。
TASK: 既存Workflow/ReportのTASKを切り出した設定。Email送信、データ更新、ファイル出力等の実行を担う設定。
(注)GA時点でサポートされている外部サービス(アップシートのbotが起動する外部アプリのイベント)はGoogleスプレッドシート, Salesforce, Google Drive、Google Formの4つ。連携できる外部サービスやアプリは今後続々と追加される予定とのこと。
従来Workflow/Reportを置き換えた上で大幅に増強している内容となっているため、理解をすすめるために以下図解を準備いたしました。
Automation設定の概要
Workflow/ReportからBOTに移管された内容
PROCESSに内包されるSTEPとTASKの関係性
これらの細分化および新要素の追加によって、高度な自動化処理を実現しながらも作成したコンポーネントを再利用可能とし、アプリ開発の生産性向上が図られています。
Googleが広げようとしている市民開発者(シチズンデベロッパー)を対象とするためには、今後より一層のUI/UXの向上が期待される部分です。
コンポーネントの再利用による生産性の向上
Google Driveがデータソースとして追加(フォルダ、ファイル名などのデータ構造を読み込み、テーブルとしてアプリで利用)
核となる機能としてはGoogle Driveをデータソースとして追加できるようになったことが挙げられます。
AppSheetでのGoogle Drive の設定方法は大きく2つに別れており、フォルダを指定し全てのファイルのメタデータをテーブル情報として取得ケースと、請求書/レシート/W-9フォームのPDFファイルを対象とするケースになります。
請求書やレシート情報の取得が可能とされたリリース内容は後者の機能を指し、請求書PDFという非構造データをGoogle Cloud’s Document AIを利用してテキストとして取得、アプリで利用可能な状態に構造化する機能です。Google Driveに請求書などを保存、アプリから読み込ませるだけで相手先、金額などを読み取り構造化されたデータに変換してくれるサービスです。
気になるのがその精度ですが、今後の検証作業やトライアルを通じて明らかになってくるものと思います。すべてのサービスはGoogle が展開・提供するAPIを土台としたサービスとなっているはずで、APIの機能拡張や精度向上が即時 AppSheet 上で体現されるであろう点もメリットと考えています。
またフォルダーを指定するだけでファイル名やPATH, Google のファイルIDなどをTableデータとして返してくれる機能も。Google に保存されたファイルのIDを取得することができるため、様々な用途での利用が可能となり、アップシート上でのファイル管理機能を強化し、更にリッチなユーザーエクスペリエンスを提供してくれるでしょう。
Gmail連携などの今後の開発計画発表
今回、Gmail内にて承認操作を可能とするようなAppSheet コンポーネント配置の開発が進められていることがリリースされました。
これまで未公開の新情報となり、当然ながら公式リリース時点の機能には含まれていませんが、近日中に追加のプレビュープログラムとして公開されていくものと予想されます。
また、こちらのコンポーネント機能に関しては、Google社とTwitter社によって進められる次世代WebページフォーマットであるAMPでの実装が示唆されており、これも AppSheet Automation が活用の幅をますます広げるでしょう。
※AppSheet Automationにてメール配信タスクを指定。AMPコンポーネントが配置されたメールが配信されると同時に、GoogleのUIに準拠した上で、アプリのデータをメールの本文から直接操作できるなど、Google の各種サービスの連携の中でも登場が待ち望まれる機能の一つとなりました。
最後に
公開された AppSheet Automation の機能は広範囲に渡り、今後 AppSheet の中核機能となることは間違いありません。複数のBOTによる連携処理、外部サービスとの連携。AppSheetの機能を拡大し、かつ外部アプリとの連携を更に深めることに貢献することは間違いなさそうです。
現状 RPA や iPaaS にて対応しているような業務課題をこのAutomationが直ちに解決してくれるものではありませんが、本気モードに入ったGoogleを考えますと、このAutomationを足がかりに RPA や iPaaS といった分野でのサービス追加も実現されると考えるのが自然かもしれません。
具体的なAutomationの展開においては、直後の AppSheet Office houre でも触れられていましたが、最初から大きな自動化処理を実現するのではなくAutomationの進化に沿って、以下のようなステップで導入を進めることが、社内のDX推進においては近道となるでしょう。
Step1:これまでWorkflowやReportで実現していた業務要件を、Automationを利用して実現(Automationの習熟)
Step2:Automation の追加された新たな要素を利用して自動化部分を追加(Automation対象範囲を拡大)
Step3:今後リリースされる機能を活用し、自動化が難しいとされる業務要件にも適用(自動化を前提に全ての社内業務見直し)
プレビュープログラム期間より Automation の理解とAppSheet開発チームへのフィードバックを行ってきた弊社では、引き続き皆様の現場でのお悩みに対して、Automationを活用した改善のご提案を継続して参ります。
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